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最新の膝OAの保存療法のエビデンス【レビュー】

理学療法士のこうすけです。

今回は最新の変形性膝関節症(膝OA)に対する保存療法のエビデンスをまとめた論文を紹介します。

これは、2019年にノースウェスタン大学が行なった研究でして、

膝OAに対する保存療法(運動、体重減量、薬、徒手療法、サプリメント)のエビデンスをまとめたものになります。

それでは、各項目ごとにこれらのアウトカムへの影響を見ていきましょう

運動療法(Exercise)

何が一番初めに思いつくかって我々理学療法士にとって膝OAの保存療法で思いつくのは運動でしょう。

重錘を足首に巻いて、運動してもらったり、トレッドミルでの歩行訓練、チューブを使う人もいますかね?

痛みが強い人には膝の下にタオルを敷いてセッティングをしている人もいるでしょう。

様々な運動療法を皆さん実施しているかと思いますが、どれが効果的なのでしょうか?

膝OAにおける運動療法は抵抗運動(筋トレ)有酸素運動に分かれます

抵抗運動(筋トレ)

まず、筋トレの効果について見ていきましょう。

まず、大前提として、筋トレの目的は膝の安定化と、膝の内転モーメントの減少です。

そのために、いろんな場所を筋トレしますね。

実際、患者さんは大腿四頭筋やハムストリングス、股関節外転筋を含む脱力感の訴えがある人が多く、膝を中心として下肢全体の安定感の欠如が見られます。

そして、この筋力低下が機能障害と関連していることが分かっており、それに対して、我々は介入する必要があるのです。

典型な介入の例としては

  • 等張性の膝伸展訓練
  • 足関節に重錘を巻いて膝伸展運動
  • スクワット
  • セッティング

が挙げられます。

では筋トレは効果があるのか

結論から言うと膝OAに対する保存療法の中では強力なエビデンスを持つ介入方法になります。

その方法は、週に2−3回で6〜12週間行い、メニューは大腿四頭筋訓練を含めた下肢全体を鍛えるような運動です。

これを継続して実施することで効果が得られます。

しかし、残念なことに運動やめてしまうとこの効果はすぐに消えて無くなってしまうのです。

なので、患者さん自身の運動経験や動機、好みに応じてプログラムを変更し遵守率を高めていくことが、重要です。

つまり、下肢の運動の種類によって効果が変わると言うよりは、『一般的な下肢のトレーニングでも効果はあるけど、続けなきゃ意味ないからモチベーションを保ち続けれるようにときどきメニューは調整しましょうね』と言うことになります。

これが、筋トレメニューを組むときの指針です。

有酸素運動

次に有酸素運動はどうでしょう?

これも、効果大です!!

膝OA患者の疼痛と身体機能を改善させる強力なエビデンスがあります。

その中でもエビデンスが確立されているものとして、『ウォーキング』があります。

2003年にTalbot LAらが報告したウォーキングプログラムでは、大腿四頭筋の筋力向上や歩行能力改善、膝OA関連の疼痛を軽減したとの報告があります。

多くの介入は一回20〜60分、週に2~3回の連続歩行を実施して効果を認めているので、それを目標に患者さんに指導していくといいでしょう。

また、筋トレと同様に介入をやめてしまうと効果が無くなってしまうので、継続して実施できるようにマネジメントしていく必要があります。

さらに、少し強度を上げた有酸素運動についてもレビューされており、

強度の高い有酸素運動は、わずかにエビデンスがあるが、確立されるまではやらないほうが無難であろう

という比較的強力なエビデンスもあるので、あくまでも負荷は抑えてやっておくのが良いでしょう。

体重減少(Weight Loss)

体重過多、肥満は膝OAの明らかな危険因子だとされ、メタアナリシスによるとBMIが5増加するごとに膝OAのリスクが35%上昇すると報告されていることからも、介入は必須です。

ちなみに体重過多はBMI25.0〜29.9肥満はBMI30以上が基準となります。

そもそも、体重の増加はなぜ膝OAの要因になるかと言うと

  • 機械的要因
  • 代謝的要因

の二つが原因とされており、

一つ目の機械的要因に関しては、関節負荷の増大、相対的な筋力低下(太りすぎて体重に見合った筋力がない)が問題として挙げられ、

二つ目の代謝的要因としては、アディポカインをはじめとする脂肪性炎症たんぱくの増加により炎症が生じるとされています。

ここまでで、どれだけ、太っていることが膝OAにとってまずいのかということは改めてご理解いただけたかと思います。

では、減量したら良くなるのか?

これに関しては、体重減少は素晴らしい効果を生みます

いくつかのRCTは食事療法や食事療法+運動療法の効果について検証しており、ベースラインの10%以上の体重減少は、6分間歩行テスト、歩行速度の改善、疼痛軽減を報告しています。

さらに、10%以上体重が減少した者は関節の圧縮応力が減少するのはもちろん、炎症性メディエーターであるインターロイキン6の血清中濃度の減少を報告しています。

よって、膝OAに対する体重減少介入は機械的にみても、代謝的にみても根本に対する介入が可能だということです。

しかし、拡大解釈は禁物です。

Jafarzadeh SRらが2018年に行った研究では、40人の肥満患者に対して、体重減少のための外科的処置後(外科的処置により体重は20%以上減少)の膝の状態をMRIで評価していますが、有意な構造学的変化はなかったと報告しています。

一方で、

Gersingらが2016年に行った研究では、640人を対象として4年間以上10%以上の体重減少に成功した肥満・体重過多患者と減量しなかったグループを比較して膝をMRIで評価したところ、軟骨損傷の減少が見られたと報告しています。

これらのことよりまだ一致した見解が得られていない以上、減量がその後の膝の変形を予防できるかはまだ結論がでていません

ここまでで、体重減少によってどんな効果が期待できるのかはご理解いただけたと思います。

ここからは実際に指導する際にどこを目標にしたらいいのかについてお話しします。

結論から言うと、ベースライン体重の10%を目標にしてください。

Gudbergsen らが2016年に行った研究では、膝OA患者192人を集め、体重減少を目的として低エネルギー食事療法を実践したところ成功者(10%以上の減量)は膝OA症状の改善を報告しています。

また、米国国立心臓・肺・血液研究所も過体重、肥満の患者は6ヶ月以内に開始時の体重の10%減量させることを推奨しています。

ただ、実際には、1週間に0.24%の割合で合計5.1%の体重減少でも身体障害の改善が報告されているので、効果がないわけではないですが、最終目標は10%減量がいいでしょう。

食事療法の詳細はこの論文には細かく書かれていなかったので割愛しますが、やはり減量のスタンダードであるカロリー制限を推奨しています。


サポーター・インソール

サポーターやインソールもよく臨床で使われる手段の一つですね。

これらはエビデンスがあるのでしょうか?

サポーター

サポーターは関節負荷の軽減や関節の安定化に使用されます。

2011年のシステマティックレビューではあらゆるタイプのサポーターが疼痛、関節のこわばり、歩行の改善に関連していたとされる中等度のエビデンスがあったと報告されていますが、その後の2015年のレビューではエビデンスは不足していると報告しています。

また、Komistek RDらは正しくサポーターを装着することで関節の離開を増加させる(ストレスを減らす)ことが期待できると報告しています。

こうした様々な報告が見られるため、現状においては、サポーターをすることをどんどん推奨していくことはできません

足底板

Bennell KLらが2011年に行ったRCTでは、内側型OA患者に外側ウェッジインソールによる介入を12ヶ月間実施したが、疼痛軽減や軟骨体積の変化は無かったと報告しています。

一方で

Pham Tらが2004年に行ったRCTでは外側ウェッジインソールを2年間使用しても、膝痛減少や機能障害の改善には繋がらなかったが、痛み止め(NSAIDS)の使用が減ったとの報告があります。

2012年のシステマティックレビューでは、効果を示すエビデンスは不足しているが、肥満患者かつ初期のOAに有効かもしれないと著者は述べています。

結論は、サポーター同様推奨できると言うにはエビデンスが不足しているということです。

徒手療法・物理療法・鍼治療

さて、理学療法士の多くが一番時間を割いている(僕は割いていない)であろう徒手療法や物理療法などのエビデンスはどうでしょうか?

徒手療法

Jansen MJらが2011年に行ったシステマティックレビューによると、徒手療法+運動療法は運動療法単独と比較するとわずかに疼痛を軽減させるとという中等度のエビデンスがあったと報告されています。

巷で盛んに勉強会が開かれている徒手療法ですが、効果がないとは言わないまでも、現状は陶酔するほどの効果はないというのが実態のようですね。

超音波療法(US)

Ulus Yらが2012年に行ったRCTでは、運動療法にUSを追加してsham刺激群との比較を行っています。

結果は、両群ともに疼痛・身体機能の改善を認めたが、郡間での差はなかったというものでした。

Loyola-Sánchez Aら、Rutjes AW らがそれぞれ2010年に行ったレビューにおいても、結論を出すにはさらに大きな研究が必要であると述べています。

よって、現状ではUSは推奨できるとは言えません

鍼治療

Manheimer Eらが2010年に行ったシステマティックレビューによると、

鍼治療は疼痛軽減あ身体機能の改善に効果が見られた報告もあるがsham刺激との比較研究においては大きな差は見られない

と報告されています。

鍼治療という特性上、どうしても、施術者による差が出てしまうことなどが、影響として考えられます。

薬物療法

ボリュームがものすごく多くなったので、簡単に述べると

サプリメント

患者さんから聞かれることも多いサプリメント。

これ飲んだら聞くんですか?テレビでやってたやらCMで見たやら・・・

この答えに応えるためある程度の知識は必要でしょう。

本論文では大きく2種類のサプリメントについて紹介しています。

グルコサミン:・コンドロイチン

患者さんから聞かれるランキング圧倒的1位でしょう。

Clegg DOらが2006年に行った研究によると、グルコサミン/コンドロイチンを単独or両方服用した膝OA患者とプラセボ患者で比較すると疼痛軽減に有意差はなかったとの結果となりました。

ただし、筆者の意見として、中等度〜重度のOA患者には有効である可能性もあるとのことでした。

アメリカリウマチ学会も2012年に膝OAの治療に医療従事者がグルコサミン/コンドロイチンを使用すべきでないと提言していますので

患者さんに聞かれても、『賛否両論あるけど、効果が確立されていないので使ってもしょうがないよ

とこれから飲もうとしている人には伝えるといいでしょう。

ただしすでに飲んでいて効果を感じている人に対しては『効果を感じていて、お金に不自由していないならそのまま使用しましょう』と僕なら話します。プラセボでも効果を感じているなら邪魔する必要はないですからね。

安全性は問題ないようですし

ウコン

これは僕は聞いたことがなかったのですが、ウコンが膝OAに効くって話もあるんですね

なんでも、ウコンに含まれるクルクミンの抗炎症作用で膝OAの炎症が治るとかなんとか・・・

Onakpoya IJらが2017年に行ったシステマティックレビューでは、膝OA患者に対する疼痛のマイルドな軽減効果を報告しています。

しかし、適切な量や、頻度など研究が少ないため、実際におすすめするには材料が足りないと筆者は指摘しています。

よって、ウコンも現状推奨できるとはいえない状況となっています。

結論

現状、積極的に推奨される保存療法は筋トレ、有酸素運動、体重減少、局所薬でした。この結果から見ると、我々理学療法士は一生懸命膝の評価をして、筋膜とかモビライゼーションするより、運動の継続と減量方法について勉強した方が良い結果を生むかもしれないということですね。

何かの参考になれば幸いです

参考文献

DADABO, Joseph; FRAM, Julia; JAYABALAN, Prakash. Noninterventional therapies for the management of knee osteoarthritis. The journal of knee surgery, 2019, 32.01: 046-054.

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  1. […] 以前に膝OAには運動療法がいいよーという話をしましたが、そこから一歩踏み込んで具体的にどんな負荷がいいのか検討した論文を今回は紹介したいと思います。 […]

  2. […] 以前にお話しした膝OAのエビデンスについての論文でも運動療法はとても効果のある方法として推奨されているので、もし取り入れていないもしくは軽く指導する程度と考えている人がいれば、ぜひ導入してみてください。 […]

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