理学療法士のこうすけです。
皆さんは、膝OAに対して運動療法ってやってますか?
以前にお話しした膝OAのエビデンスについての論文でも運動療法はとても効果のある方法として推奨されているので、もし取り入れていないもしくは軽く指導する程度と考えている人がいれば、ぜひ導入してみてください。
ただ、運動療法を導入するにあたって患者さんから『これってどれくらいやったらいいの?』とか『どれくらいやったら効果あるの?』という質問を必ずされると思います。
また、僕たちも運動療法がやった直後に効かないことは分かっていながらも、『じゃーいつくらいで効果が出るのか』については、疑問に思うところがあると思います。
そんな疑問に答えるような論文が出ましたので紹介したいと思います。
これは、2019年にミナス・ジェライス連邦大学が行ったシステマティックレビュー(メタアナリシス)でして、
55件のRCTから
- どんなタイプの運動療法が疼痛軽減効果があるか
- 運動療法の介入期間による疼痛軽減効果の違いはどうか?
- 運動療法の週の頻度による疼痛軽減効果の違いはどうか?
について検証したものなります。
運動のタイプには
- strength training(筋トレ)
- aerobic exercise(有酸素運動)
- proprioception exercise(バランス訓練など)
- Mind-body exercise(ヨガなど)
- MDT(Mechanical diagnosis and therapy:動きなどから評価して治療するなど)
の5つが含まれていました。
介入期間は
- 4−7週
- 8−11週
- 9−15週
- 16週以上
介入の頻度は
- 週に1or2回
- 週に3回
- 週に4回以上
で比較されました。
その結果はどうなったかとういうと
効果的な運動療法
- 筋トレ
- 有酸素運動
- Mind-body exercise(ヨガなど)
- 筋トレとproprioception exercise(バランス訓練など)の併用
- 有酸素運動とproprioception exerciseの併用
効果的な運動療法の継続期間
- 8−11週
- 9−15週
効果的な運動療法の週の頻度
- 週3回
となりました。
まず、効果的な運動療法については
結構メジャーな運動療法は効果があったんだなあという印象ですね。
ただ、気になったのは筋トレ、有酸素運動単体ではそれぞれ効果が認められているのに対して、併用した場合効果が認められなかったということです。
これは、研究データ数の不足も考えられるので、あまり深く考察しても意味はないのかもしれませんが、負荷量が高くなりすぎるという問題もあるのかもしれません。
ただ、データを無視するわけにもいかないので、現状としては、筋トレと有酸素運動を両方ともやるよりは、どちらかに絞ってやったほうが効果的であると考えられます。
また、MDTが効果が認められなかったというのも知っておかなければいけないなと感じました。
MDTは動きや姿勢などから機能不全などを評価し、治療していくというまさに『我々が学校で理学療法として習ってきた』方法です。
理学療法は『評価に始まり評価に終わる』など非常に重要視されてきた部分だと感じていますが、少なくとも動きや、姿勢などから評価して治療していくというのは現時点では効果は認められていなかったんだというネガティブな結果となってしまいました。
もちろん、真実は誰にもわかりませんし、今後評価方法やそれを利用した介入方法によっては結果は変わる可能性はあると考えていますが、この現状は真摯に受け止める必要があります。
次に、運動の継続期間に関しては、
8–15週間が最も効果があったということですが、
やはり、運動療法はある程度継続して実施しないと効果はないんだということを改めて実感しますね。
おおよそ、2ヶ月〜4ヶ月なので、それくらいじっくりみていく必要があることを患者さんにも理解してもらわないといけません。
また、『16週以上』も効果が認められなかったという結果については、8−15週で効果が出現するため、ある程度良くなってしまうと運動療法の遵守率が下がるからではとの指摘もされています。
そうなると、我々もガイドラインに示されているように、『運動の継続』にフォーカスしても良いのかもしれません。
最後に運動の頻度は『週3回』が良いとの結果となりました。
これは週1回でも、週2回でもあまり効果は期待できず、逆に週4回以上も期待できないということなんですが、やりすぎてもやらなすぎても効果はないよって解釈になりますかね。
『何事も適量が大事』
ということかもしれません。
ただし、先ほども話したように『運動の遵守』が重要なのであれば、初めは週に1回など易しい方法でスタートしてそれから徐々に週3回までやるというのもアリかもしれません。
習慣を変えるにはできるだけ小さい変化が重要であるとも言われていますので、継続できない患者さんがいた場合これも手段としては良いと思います。
以上のように科学を臨床に応用していくと、より効果的な理学療法を提供できるのではと考えています。
参考文献
IMOTO, Aline Mizusaki, et al. Evidence synthesis of types and intensity of therapeutic land-based exercises to reduce pain in individuals with knee osteoarthritis. Rheumatology international, 2019, 1-21.