医学の知識

大腿骨近位部骨折にはやっぱり筋トレが効果的ということが判明!!

この記事を読むのにおすすめな人
  • 大腿骨近位部骨折に対するエビデンスの高い介入方法を知りたい
PICOでざっくり理解

P:大腿骨近位部骨折術後患者

I:下肢漸増抵抗運動

C:通常ケア

O:移動能力・身体機能・ADL・下肢筋力・パフォーマンスタスクが改善

理学療法士のこうすけです。

 

大腿骨近位部骨折というのは非常にメジャーな疾患で、実習生が担当する疾患ランキングではおそらくダントツ一位の疾患でしょう。

 

実際に働いていても、ほとんどの病院に大腿骨近位部骨折患者がいると言っても過言ではないほど日常的に目にすると思います。

 

しかし、これだけ整形外科の代表的な疾患であるにも関わらず、最近までエビデンスの高い介入方法が無かったというのが正直なところでした。

 

中殿筋の収縮を促すためにタッピングしてみたり、電気をやってみたり、徒手療法をやってみたり様々な介入をそれぞれのセラピストが考えて実践しているというのが現状でしょう。

 

しかし、ここ数年大腿骨近位部骨折に対する理学療法も特定の介入に対するシステマティックレビューが出てきており、その効果が実証されつつあります。

 

例えば、バランス訓練。

 

バランス訓練は2019年、2020年に発表されたシステマティックレビューの中で、バランス能力や移動能力、ADLなどを大きく改善するということが示されました。

そして、このような結果はバランス訓練にとどまりません。

 

筋トレに関してもシステマティックレビューが出てきたのです。

 

今回は2017年に韓国のソウル国際大学がが行った大腿骨近位部骨折に対する筋トレの効果を検証したシステマティックレビューを紹介させていただきます。

 

論文のタイトルは「Effect of Lower-Limb Progressive Resistance Exercise After Hip Fracture Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Studies 」で

 

日本語訳では「大腿骨近位部骨折術後の下肢の漸増抵抗運動の効果ーRCTのメタ分析とシステマティックレビュー」です。

 

では、背景から学んでいきましょう。

背景

大腿骨近位部骨折術後患者の機能は老年医学を元にした介入や早期リハビリテーション、早期退院のような亜急性期のケアにより向上が図られます。

 

理学療法や作業療法、転倒予防、栄養サポート、環境改善や合併症を含めた整形外科的治療は身体機能とQOLの改善への効果が示されています。

 

しかし、このような集学的リハビリテーションははじめの1年間はコスパに優れますが、それ以降はむしろ高額になるというデータも存在します。

 

そして、このような包括的なリハビリテーションの多くには下肢の漸進抵抗運動(PRE)が含まれています。

 

大腿骨近位部骨折に対するPREの効果は移動能力、バランス、ADLの改善がみられたという報告がありますが、それらを詳細に検討したものはありません。

 

また、PREは、疼痛の増悪の懸念からあまり用いられていない傾向が見られます。

目的

大腿骨近位部骨折に対する漸進性抵抗運動の効果についてメタ分析しその効果を検証することです。

方法

1 PubMedやEmbase、Cochroneなど使用して【Hip fracture、Femur Neck Fracture、Resistance Training】などのキーワードで検索を行う

2 基準に当てはまるもののみを残す

Inclusion(選択基準)

  • 大腿骨近位部骨折術後のPREの効果を検討したRCTであること
  • 手術方法に制限なし

Exclusion(除外基準)

  • 英語以外の言語で書かれている

3 メタ分析する

結果

  • 検索ワードに該当した451論文の中から最終的に基準を満たしたものは8本
  • PREは移動能力・身体機能・ADL・バランス・下肢筋力・パフォーマンスタスクを改善する
  • 自己申告の身体機能は有意差なし

私見と考察

論文の著者の主張
  • この論文は大腿骨近位部骨折に対するPREの効果を検証したはじめてのPREだ
  • 仮説の通りPREは非常に有効な介入方法だった
  • PREによる不安の増強は無く、脱落率もPREグループの方が少ない
  • 自己申告の身体機能に関しては、質問紙の内容の難易度が高すぎる(ランニング、激しいスポーツ)ことや、疼痛に重きを置いているため、長期にわたって疼痛が持続する大腿骨近位部骨折では結果として現れなかったのではないか

大腿骨近位部骨折患者に対して、筋トレをしない人はおそらくいないとは思いますが、PREのように1RMを測定するなどして、徐々に負荷量を上げていくようなトレーニングを厳密にやっている方って意外と少ないのではないでしょうか。

 

この論文によれば、筋トレによる害もないし、効果は非常に高いってことなのでやらない理由がないです。

 

ただ、元になった論文や他の筋トレのRCTを見ていると分かりますが、1RMの計測があまり現実的じゃないんですよね。

 

 

何しろ計測しにくい。

 

 

僕個人的には、主観的運動強度:Ratings of perceived Exertion(RPE)←PREじゃないですよ

 

が結構使えるなーと思っています。

 

これは負荷量を自覚症状(めっちゃきつい、少しきついなど。数値で分類するものも)で分類するもので、1RMの測定の参考になるという報告もあります。

 

もしこれもやりにくいということであれば、しっかりと限界回数までトレーニングを行なっていくことで、かなり再現性が高く効果的なトレーニングが実施できると思います。

 

少しでも参考になれば嬉しいです。

 

ご覧いただきありがとうございました。

 

また、twitterもやっておりますので、ご意見やご質問がもしあれば気軽に聞いてください^ ^

 

【参考文献】

Lee, Sang Yoon, et al. Effect of lower-limb progressive resistance exercise after hip fracture surgery: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled studies. Journal of the American Medical Directors Association, 2017, 18.12: 1096. e19-1096. e26.

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