理学療法士のこうすけです。
以前に肩関節周囲炎に対する物理療法の効果について検討したシステマティックレビュー(エビデンスレベルが非常に高い論文)を紹介しましたが、その中で効果が期待できるとされた介入方法は唯一LLLT(低出力レーザー療法)でした。
つまり、今のところ自信を持って肩関節周囲炎に対して治療を行うことができる物理療法はLLLTだけということですね。
ただ、具体的にどのような方法で介入を行えば良いのかというのがわからないのがシステマティックレビューの欠点でもあります。
そこで、今回はこのシステマティックレビューに採択されたLLLTの効果を検討したRCTを紹介したいと思います。
これを読めば以下のことが期待できます。
- 肩関節周囲炎に対してLLLTを行う際の具体的な方法が分かる
論文紹介
今回紹介する論文は、2008年にギリシャのペロポネソス大学が行なったRCTでして、44人の肩関節周囲炎(frozen shoulder)の男女に対してLLLTの効果を検討したものです。
方法
参加者をレーザー照射群とプラセボレーザー照射群(実際にレーザーが出ていない)に分け、初めの4週間は週2回、次の4週間は週1回の合計8週間(12セッション)介入を行いました。介入に使用したレーザーは波長810nm、60mW、3.6J/cm2で痛覚計で測定した肩関節の最も痛みが強い8箇所に実施し、1箇所あたりの照射時間は30秒でした。
また、両群ともに、ホームエクササイズとして痛みのない範囲でのコッドマン体操、自動運動を行うよう指示されました。
OUTCOME
OUTCOMEは、VAS(全体的な疼痛、夜間痛、活動関連の疼痛)、肩の能力障害(SPADI; shoulder pain and disability index、Croft shoulder disability questionnaire、DASH; disability of arm, shoulder, and hand、HAQ; health-assessment questionnaire)、可動域(肩関節自動屈曲、外転、外旋)でした。評価はベースライン時、4週、8週、16週の4回実施しました。
- VAS(全体的な疼痛、夜間痛、活動関連の疼痛)
- 肩の能力障害(SPADI、Croft shoulder disability questionnaire、DASH、HAQ)
- 可動域(肩関節自動屈曲、外転、外旋)
結果
それでは結果を見てみましょう。
疼痛
- レーザ照射群は4週、8週、16週においてプラセボレーザー照射群と比較し3つの疼痛すべてが有意に減少した
能力障害
- レーザー照射群は、全般的に改善がみられた
可動域
- 肩関節屈曲、外転、外旋すべてで有意差は見られなかった
以上のような結果となりました。
考察と私見
結果を見てみると、LLLTは疼痛の軽減にはかなり有効な手段ではないかと言えそうですね。そして、この結果のすごいところは、レーザーをやめてから8週間後においても効果が自足していたというところです。
LLLTの鎮痛の作用機序は、神経伝導抑制や血流改善、抗炎症作用など様々な説がありますが、まだはきりと分かっていません。
ただ、ホームエクササイズと併用することで効果自体はかなり期待できるので、オススメできる治療方法ではないかと考えられます。
実際、人間の体は分からないことの方が多いですし、そこを追求するということも重要ですが臨床で働く者にとって最も大切であり患者が求めるのは『結果の出る治療方法』ではないでしょうか?
可動域の改善が見られなかったことに関しては、論文の著者であるAPOSTOLOSは『LLLTは筋肉に影響を与えることはできるが、関節包に影響は与えない(最大でも2cmの深度にしか到達しないため)ので、可動域に改善が見られなかったのではないか?』と考察しています。
疼痛が減少したら可動域も改善しそうなものですが、関節包や靭帯の肥厚なども特徴とされる肩関節周囲炎ですので、疼痛の減少だけでは可動域が改善しなかったのかもしれません。
まとめ
今回は肩関節周囲炎に対して効果の期待できる介入方法であるLLLTの効果について検討したRCTを紹介しました。
その際の具体的な方法は『ホームエクササイズ(痛みのない範囲でのコッドマン体操、自動運動)と併用して、LLLTを指定の強度で1箇所につき30秒間、痛みの強い場所8箇所に週2回8週間治療を行うことで肩関節周囲炎の疼痛と能力障害を改善できる』となります。
LLLTが置いてある施設で働いている方はぜひ試してみてください。
少しでも参考になれば嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】