医学の知識

腰痛患者にコルセットは益か害か?【RCT】

はじめに

理学療法士のこうすけです。

今日はコルセットについての話です。

腰痛の人に対してコルセットをつけるのは有効なのかむしろ害なのか?

これに関しては、理学療法士の中でも意見が分かれるところではないでしょうか?

確かに、コルセットをつけると楽になる感じはあるし、良い気がするけど、長くつけていると体幹の筋力が落ちてしまうから良くない気もする。

これは、論文の中でも意見が分かれ、コルセットの着用は疼痛の軽減に効果があるとする論文や、脊柱起立筋の筋力低下を招くとする論文もありどっちもどっちというような見解であり、さらには、ある程度長期間の経過を見たものは少なく実際問題どっちが良いのというのは結論がつけられないという現状でした。

しかし、これの答えに迫るような論文が出ましたので、今回紹介したいと思います。

論文紹介

これは、2019年にイランにあるシーラーズ医科大学が行なったRCTでして、

48人の慢性の非特異的腰痛の患者を対象に『軟性コルセット装着群』『軟性コルセット装着(強)群』『コントロール群』に分け、4週間のコルセットの効果を検討しました。

介入方法

なお全ての群にNSAIDSを投与しました。

アウトカム

ベースライン時と4週間後に実施しました。

  • 体幹屈筋と伸筋の等尺性、等張性、および遠心性筋力
  • 体幹屈筋と伸筋の持久力
  • 屈曲と伸展の深部感覚
  • 筋電図(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、脊柱起立筋)
  • 疼痛
  • 機能障害

結果

筋力、持久力、筋電図においてグループ間でほとんど変化は見られなかった

全てのグループで疼痛が改善した

機能障害、深部感覚はコルセット着用グループ2群が有意に改善した

疼痛および、機能障害は軟性コルセット着用(強)群が軟性コルセット装着群よりも改善した

という結果となりました。

ざっくりいうと、『コルセットをつけるデメリットはなく、機能障害改善などのメリットがあった』『どちらかというとコルセットは強めにつけたほうがよさそう』ということですね。

考察と私見

結果を見てみると、コルセットは使っても良さそうだということが分かりました。

しかし、論文の著者であるMahbobehは、『サンプルサイズの少なさ、評価者の盲検化ができなかったこと、NSAIDSの影響をバイアスとして挙げており、この研究だけでは結論を導き出すことは難しい』と述べており、コルセットの使用に関する結論はまだ分からないといった結論となりました。

サンプルサイズの少なさとは単純に被験者数の少なさを示しています。

評価者の盲検化とは評価の際に被験者がどの群か分からないようにして評価を行うことで、それがなされないと、評価者がどの群に被験者か分かった状態で評価することになるのでバイアスが入り込んでしまうことになります。

NSAIDSの影響とは、3つのグループ全てで疼痛の軽減が見られたように薬の影響が複合的に影響する可能性が考えられるということを示しています。

このようにバイアスが含まれてしまったため、はっきりとした結論に至ることはできませんでしたが、少なくとも現時点では

コルセットをつけていても悪影響はない

とは言えそうです。

患者さんに説明する際にも訴えを聞き、コルセットを着けている方が楽だということであれば、悪影響は少ないと考えられるため、『着けていても良いでしょう』と説明することができるかと考えます。

 

参考になれば嬉しいです。

ご覧いただきありがとうございました。

【参考文献】

Samani, Mahbobeh, et al. A randomized controlled trial comparing the long-term use of soft lumbosacral orthoses at two different pressures in patients with chronic nonspecific low back pain. Clinical Biomechanics, 2019, 69: 87-95.

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