理学療法士のこうすけです。
今回は、『凍結肩の患者には積極的な介入がいいのか愛護的な介入がいいのか』について研究された論文について紹介していきます。
これは2004年にグローニンゲン大学病院が行った前向き研究(prospective study)でして、
1997年から1999年の間に集められた45人の男女(経過観察群)と1999年から2001年の間に集められた男女32人(積極的介入群)に分けました。
経過観察群
- 自然経過の説明(予後がいいこと)
- 痛みのない範囲での振り子運動・自動運動、できる範囲での運動の再開
積極的介入群
- 理学療法士による疼痛閾値以上の他動的運動、他動的ストレッチ、およびマニピュレーションおよびストレッチ
- 家庭での最大限のストレッチ
上記のようにそれぞれの群に対して介入を行い2年間3ヶ月ごとに評価し、OUTCOME指標にはConstant Shoulder scoreを使用しました。
- 肩の機能を主観的および客観的に評価する方法
- 疼痛・機能・可動域で構成される100点満点の評価
- 80点以上が正常レベルである
- 詳しくはこちらを参照
すると結果は
- 3ヶ月後から24ヶ月後までの計8回の評価全てにおいて経過観察群がConstant Shoulder scoreにおいて有意に優れた結果となった
- 経過観察群は2年後に89%が80点以上となった
- 積極介入群は2年後に63%が80点以上となった
となりました。
グラフで見るとこのようになっています。
経過観察群が介入直後に一気にスコアを上げてその後は両者とも同様な改善を示したようなグラフになっていますね。
最終的には圧倒的に経過観察群の方が成績がよくなりました。
この原因については、この研究から知ることは難しいですが、Ronaldは『凍結肩の経過は炎症、増殖、線維化、およびリモデリングのさまざまな段階に分類されており、これらの自然経過を積極的介入が邪魔しているのではないか』と述べています。
僕の認識としては凍結肩に対する理学療法は積極的にストレッチなどを行っていくのがスタンダードだと考えていたのでこの結果には驚きでした。
ただ、研究デザインがRCTではないので、かなりのバイアスが含まれること、他の同様な研究がないことを考えると、鵜呑みにはできませんね。
この論文だけで、積極的にやるか愛護的に見ていくのか正解を見出すことはできませんが、愛護的にやった方が良い結果をもたらすこともあるという認識は持っていても良いと思います。
皆さんの参考になれば幸いです。
参考文献
DIERCKS, Ronald L.; STEVENS, Martin. Gentle thawing of the frozen shoulder: a prospective study of supervised neglect versus intensive physical therapy in seventy-seven patients with frozen shoulder syndrome followed up for two years. Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 2004, 13.5: 499-502.
[…] 以前にもお話ししたとおり、高強度でストレッチや筋トレをした群とはじめに軽く説明だけして経過観察を行った群では経過観察だけを行った群の方が可動域、痛みともに成績が良かったという報告があり、高強度でストレッチ、筋トレをするくらいならやらないほうがマシという結果が出ております。 […]