理学療法士のこうすけです。
膝OAに運動療法が良いということは、システマティックレビューでもたびたび言われており、もはや疑いようのない事実なんですが、なかなか筋トレが続かない人が多いと思います。
実際に負荷が高いトレーニングほど遵守率が下がるという報告もあり、これは運動療法を指導する立場である理学療法士にとっても見逃せない問題です。
このような背景があるため、筋トレ以外の運動療法を知っておくことは非常に大切であり、より簡便な方法を知っていれば、治療の幅に広がりを持たせることが可能となります。
そこで、今回紹介する論文は、『ウォーキング+教育は膝OAに効果があるか』というテーマの研究です。
『歩く』という動作は生きていれば多くの人が自然と行うものですし、非常に導入しやすいものなので、臨床的にも使いやすい介入方法です。
これは、1992年にhospital for special surgeryとコロンビア大学が行なったRCTでして、
102名の膝OA患者を対象に『ウォーキング+教育群』『コントロール群(無介入)』の2群に分け8週間の介入効果を検討したものです。
具体的な介入方法は
・ウォーキング+教育群
- 週3回
- 合計90分の介入
教育
- 変形性関節症と運動に対する医学的知識の指導
- ウォーキングのメリット・デメリットに対するグループディスカッション
- 適切な歩行の指導と歩行プログラムの維持
- 激励
ウォーキング
- 院内を最長30分間歩行
※軽いストレッチ+筋トレも実施
・コントロール群
- 特に介入なし
- 電話で定期的に状態を聴取
です。
評価はベースライン(開始時)と介入後(8週間の介入終了時)の2回評価を行い、具体的な評価(アウトカム)は以下の通りです。
- Arthritis Impact Measurement Scale(AIMS)
- 6分間歩行テスト
Arthritis Impact Measurement Scale(AIMS)とは
リウマチ性疾患の研究でよく使われるQOL評価で、67項目のアンケートからなる。
身体機能、健康状態、疼痛、薬物使用を0−10点で評価する(身体機能、健康状態、疼痛は高いほど悪い。薬物使用は高いほど悪い;使用量が多い)
では結果を見ていきましょう。
6分間歩行
- ウォーキング+教育群:有意に改善した(18.4%↑)
AIMS physical activity subscale(身体機能)
- ウォーキング+教育群:有意に改善した(39%↑)
AIMS arthritis impact subscale(健康状態)
- 改善傾向(有意差なし)
AIMS arthritis pain subscale(疼痛)
- ウォーキング+教育群:有意に改善(27%↓)
AIMS medication use subscale(薬物使用)
- 有意差なし
- 使用量は減少傾向
という結果となりました。
これを見るとウォーキング+教育は膝OA患者に一定の効果がありそうですね。
ただ、この研究結果を患者さんに活かすのは大変難しいと感じました。
この結果だけでは、患者さんに対してウォーキングを推奨することはできないからです。
ウォーキングだけでなく、教育セッションを毎回60分程度やっており、さらに週3回となると日本における理学療法において現実的ではありません。
よって、このまま活かすというよりは、患者指導をする際に”運動の効果の説明や正しい歩行方法の指導”など効果があったとされる方法をかいつまんで導入していく方が良いかと思います。
また、週3回30分ウォーキングしても少なくとも悪くはならないと考えられるため、患者さんから歩いてもいいですかと聞かれた際のヒントとしては使えるのではないでしょうか。
『歩くと負荷がかかるから』とセッティングなどの軽度の筋トレのみの指導にとどまることも多いので、少なくとも『歩いてもいいんだよ』と伝えることで活動量の向上につながりそれが下肢の筋力向上に役立つかもしれません。
参考になれば嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】
Kovar, Pamela A., et al. Supervised fitness walking in patients with osteoarthritis of the knee: a randomized, controlled trial. Annals of internal medicine, 1992, 116.7: 529-534.