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人工骨頭置換術後の脱臼の原因は?

理学療法士のこうすけです。

我々は学生時代に耳が痛くなるくらい大腿骨頸部骨折の人工骨頭置換術後の患者さんへの対応として『脱臼肢位に気をつけなさい!!』『前屈み動作も注意しなさい』『起き上がるときにも徹底しなさい』などの言葉を聞いてきた人も多いかと思います。

就職してからもめちゃめちゃ言われる人、言っている人いるとは思うんですが、実際どれくらいそういう動作をとって脱臼した人がいるのかが気になって、論文を漁っていたところヒントになるような論文がありましたので、紹介していきたいと思います。

これは、2012年にヘルシンキ大学中央病院が行ったcase control study(症例対照研究)でして、575人の大腿骨頸部骨折患者を対象に人工骨頭置換術(後外側アプローチ)後の脱臼要因をレントゲン上および臨床所見により検討した論文となります。

人工骨頭置換術後の脱臼のリスクファクター自体はもっと最近のメタ分析がありますので、そちらを参考にしていただきたいのですが、この研究の面白いところは脱臼した状況を簡単ではあるものの転倒が原因なのか外傷なく脱臼したのかを評価している点にあります。

これによって、我々がかなり細心の注意を払っている『脱臼肢位の管理』がどれほどの価値があるのかがある程度把握できるわけです。

早速結果を見てみましょう

  • 手術〜初回脱臼までの平均日数は約35日
  • 脱臼の時期はほとんど術後8週間以内であった
  • 脱臼に至った経緯は転倒59%、外傷なしが26%、不明が15%であった
  • 脱臼のリスクファクターは『手術までの時間が長い(>48時間)』、『手術時間が長い(>90分)』、『CE角が小さい』、『大腿骨頸部が短い』、『オフセットが短い』であった。

では一つずつ見ていきましょう。

まず、脱臼までの平均日数が約35日で、ほとんど8週間以内という結果については、手術により切開した部分が治癒していない術後早期に起こりやすいという結果となりました。

確かに、後方の軟部組織を縫合した場合とそうでない場合には、脱臼率に差があると言われていますので、この結果から見ても、同様のことが言えそうです。

次に目玉の『脱臼した経緯』についてです。

結果は、転倒59%、外傷なし26%、不明15%となりました。

めっちゃ転倒多くないですか!?

もちろん脱臼肢位の指導は大事なんですが、指導が生きる部分はわずか26%しかないんです。

どちらかというと、術後8週間の転倒をいかに予防するかにフォーカスした方が脱臼予防に繋がるんでは?と感じました。

もちろん答えが出にくい部分ではありますが、管理が不足しがちな病棟での歩行補助具の使用変更は積極的にレベルを上げていくより慎重に行った方が良いのかもしれません。

次に、レントゲン上でのリスクファクターですが、『手術までの時間が長い(>48時間)』、『手術時間が長い(>90分)』、『CE角が小さい』、『大腿骨頸部が短い』、『オフセットが短い』となりました。

概ね、ガイドラインに書かれているような内容と同じでしょうかね。

レントゲンからの脱臼リスクの評価は現時点でかなり優秀な評価となるので、ぜひ皆さんも行っていただき、ハイリスク症例に関しては、転倒や脱臼肢位の管理をより徹底するというような使い方ができるかと考えています。

結論としては、ざっくり『脱臼は術後早期に転倒により起きることが多いから、その管理が何より大事だよ!!』てな感じですね。

参考にしていただけたら嬉しいです。

参考文献

MADANAT, Rami, et al. Dislocation of hip hemiarthroplasty following posterolateral surgical approach: a nested case–control study. International orthopaedics, 2012, 36.5: 935-940.

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