大腿骨近位部骨折患者に対するエビデンスの高い介入方法が知りたい
バランストレーニングが何に対して効果的なのか知りたい
P:大腿骨近位部骨折患者(入院・外来問わず)
I:バランストレーニング
C:バランストレーニングなし(コントロール群)
O:歩行速度、ADL、パフォーマンスタスクスコア、HR-QOLが改善
理学療法士のこうすけです。
大腿骨頸部骨折患者に対する理学療法はここ最近まで「この介入方法がいいぞ」というのはあまりなく、「リハビリテーションは良いよ」程度の極めて曖昧なエビデンスしかありませんでした。
しかし、ここ数年で次々とエビデンスレベルの高いシステマティックレビュー(SR)がでてきており、特異的な介入方法の有効性が分かってきています。
その中で、2019年に大腿骨近位部骨折患者に対するバランストレーニングの影響についてメタ分析した論文が発表されましたのでご紹介したいと思います。
論文のタイトルは「Balance training can enhance hip fracture patients’ independence in activities of daily living.A meta-analysis of randomized controlled trials」
日本語訳すると「バランストレーニングは大腿骨近位部骨折患者の日常生活自立度を高める可能性があるーRCTよりメタ分析を実施ー」
ということになります。
では、背景から学んでいきましょう。
背景
大腿骨近位部骨折は高齢者に非常に多い疾患であり、人口に比例してその数も増加してきています。
大腿骨近位部骨折患者は、筋力低下や固有受容器の障害により姿勢動揺が増加します。
自立歩行可能かどうかは大腿骨近位部骨折後のQOLに影響を与える因子であり、自立歩行をするためには姿勢制御が需要となります。
ある研究では、老人ホームに入所している大腿骨近位部骨折を受賞した女性のうち39%以上が受傷後2年でなくなっているというデータもあり、手術を含む様々な介入が死亡率と障害を減らし回復を早めることが分かっています。
その中で、リハビリテーションもまた、大腿骨近位部骨折患者の回復を促し、QOLをアップさせる効果を果たすことが知られています。
また、バランス障害は転倒の主要な危険因子の一つとされており、バランストレーニングは高齢者の転倒を減らすという研究も数多くあります。
それにも関わらず、大腿骨近位部骨折患者に対するバランストレーニングの効果は今だ分かっていません。
バランス訓練の効果を検討した研究も存在しますが、メタ分析はされておらず、一定の結論は出ていません。
目的
大腿骨近位部骨折患者に対するバランストレーニングの効果をメタ分析により検討することです。
方法
1 PubMedやEmbase、Googleなど使用して【Hip fracture、Femur Neck Fracture、Balance Training】などのキーワードで検索を行う
2 基準に当てはまるもののみを残す
Inclusion(選択基準)
- 大腿骨近位部骨折の術前か術後
- RCTであること
- 歩行速度・下肢筋力・ADL・パフォーマンスタスクスコア、健康関連QOL(HRQoL)がアウトカムにあること
Exclusion(除外基準)
- 動物実験
- RCTでない
- 症例報告
- レビュー(解説)
3 メタ解析する
結果
- 検索ワードに該当した515論文の中から最終的に基準を満たしたものは10本
- バランストレーニングは歩行速度、ADL、パフォーマンスタスクスコア、HR-QOLを改善する
- 週2回より週3回以上のバランストレーニングの方が効果的
私見と考察
- バランストレーニングは非常に効果的
- 最終的に残った論文が10本というのは少ないため、一般化(全ての患者に適応)できるかは微妙
- 長期的に見た研究がないので効果は不明(1年後はどうだったかなど)
大腿骨近位部骨折患者に対するリハビリテーションで有名なものではコクラン共同計画が発表した「Interventions for improving mobility after hip fracture surgery in adults (Review) .2011」がありましたが、その中では特定のリハビリテーションがいいとは言えないという結論になっていました。
それから約10年の時を経て、ようやくバランストレーニングという特定のトレーニングの効果が認められたというのが理学療法の世界に身を置く人間にとって喜ばしいことです。
これまでも、高齢者に対するバランストレーニングは効果が認められていたので、「多分効果あるだろうなー」と思いながらやっていたのですがこれからはより自信を持って患者さんにバランストレーニングが行えるなーと感じました。
ただ、システマティックレビューは「この運動がいい!」というのはわからないので、RCTを読んでしっかりとその方法も学んでいくことが大事です!
参考になれば嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました。
また、twitterもやっております(@welloffpt)ので、ご意見やご質問がもしあれば気軽に聞いてください^ ^
【参考文献】
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