医学の知識

【2014年】肩関節周囲炎に対する物理療法の効果【システマティックレビュー】 

理学療法士のこうすけです。

今回は肩関節周囲炎に対する物理療法(超音波、干渉波、TENS、低出力レーザーなど)の効果について検討したシステマティックレビューを紹介したいと思います。

ただ、結論から言うと、質の高い論文が少なすぎて個々の治療方法についてのメタアナリシスは行なっておらず、あくまでもある程度の質の論文を著者が一定の基準のもとで選び出し、『これがいいのでは?』といった感じで発表しているため、あまり掘り下げずさらっと説明していきますので、ご容赦ください。

論文紹介

今回初回する論文は、コクラン共同計画が2014年に行なったもので、肩関節周囲炎(adhesive capsulitis,frozen shoulder)に対する物理療法の効果についてまとめたシステマティックレビューです。

包括基準に最終的に残った19論文(1249人)から超音波療法、低出力レーザー療法(LLLT)、干渉波療法、経費的電気神経刺激療法(TENS)パルス電磁場療法(PEMF)、ジアテルミー、フォノレーシス/イオントフォレーシスの効果を検証しました。

アウトカムは可動域や疼痛、機能、QOLなどでした。

ちょっと聞いたことのない介入方法もありますが、みていきましょう。

結果

では結果を見てみましょう。

なお、効果不明のものは内容を省略させていただきます。

詳しくみたい方は、参考文献からアクセスをお願いします。

プラセボ VS 物理療法

これは、物理療法単体の効果を検討したものです。

この条件で検討されている論文は、LLLTとPEMFだけでした。

LLLT

1990年に発表された40名を対象に6日間の低出力レーザー療法が有効であったとする論文があり、低品質ではあるが効果的である可能性があると述べています。

PEMF

効果は不明という結論でした。

プラセボVS物理療法の結論

  • LLLTは効果的である可能性がある

運動や徒手療法(あるいは両方)+物理療法 VS 運動や徒手療法(あるいは両方)

これは、運動や徒手療法との併用が効果的であるかをみています。

この条件では、LLLT、超音波、フォノフォレーシス、PEMF、持続的短波ジアテルミー、物理療法の複合が検討されました。

LLLT

2008年に発表された63名の被験者に対してLLLT+ホームエクササイズとホームエクササイズのみの効果の違いを8週間比較した研究によると、LLLT群において4週後、4ヶ月後の疼痛と能力障害(disability)が有意に低下したという結果となりました。

なおバイアスは低く、ホームエクササイズの補助として中程度のエビデンスが認められた介入方法であると考えられます。

超音波

効果は不明という結論でした。

フォノフォレーシス

効果は不明という結論でした。

持続的短波ジアテルミー

効果は不明という結論でした。

物理療法の複合

超音波、TENS、ホットパックの複合やイオンとフォレーシス、持続的短波ジアテルミーとの複合などが検討されていますが、全体的にバイアスが大きく効果は不明という結論でした。

運動や徒手療法(あるいは両方)のみ+物理療法 VS 運動や徒手療法(あるいは両方)の結論

  • ホームエクササイズの補助としてLLLTが効果的であるという中程度のエビデンスがある

関節内ステロイド注射やNSAIDSのみ VS 関節内ステロイド注射やNSAIDS+物理療法

これは、注射や服薬などの理学療法以外の介入との併用が効果的であるかをみています。

この条件では干渉波、赤外線、持続的短波ジアテルミー、物理療法の複合が検討されました。

結果は、すべての介入方法で効果は不明という結論でした。

関節内ステロイド注射やNSAIDSのみ VS 関節内ステロイド注射やNSAIDS+物理療法の結論

  • すべての条件で効果不明

物理療法同士の比較

これは、物理療法同士の比較を検討したものですが、これも検討されたすべての介入方法で効果は不明という結論でした。

まとめ

つまり、ほとんどの物理療法はシステマティックレビューレベル(エビデンスレベルが最も高い)においては、効果不明という結論となりました。唯一エビデンスが認められた介入方法はLLLTでしたね。

もし、LLLTがある施設であれば、試してみる価値がありそうですね。

ただ、効果不明ということは効果があるかないかまだ結論がつけられないということでもあるので、効果不明とされた介入方法であっても、RCT(エビデンスレベルが2番目に高い)で効果が認められている方法であれば、実践していくことが良いかと思います。(もしRCTもなければ、その下のグレードの研究でも良い)

日頃、我々が行なっている理学療法がどれくらいのエビデンスがあるのかを定期的にCHECKして、現時点で最も最善の介入方法を提案し実践できるようになりたいですね。

日々勉強です。

少しでも参考になれば嬉しいです。

ご覧いただきありがとうございました。

【参考文献】

Page, Matthew J., et al. Electrotherapy modalities for adhesive capsulitis (frozen shoulder). Cochrane Database of Systematic Reviews, 2014, 10.

POSTED COMMENT

  1. […] 変わってきた点として例を挙げると物理療法があります。2011年の段階では参考文献が高くてもRCTレベルのものしか使われていないですが、2014年に肩関節周囲炎に対する物理療法の効果に関するシステマティックレビューも出ており、ほとんどの介入は効果は不明ですという結論が出ているわけです。 […]

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