理学療法士のこうすけです。
医療機関に勤めている方も、介護施設に勤めている方も、患者さんや利用者さんの多くは薬を服用している場合が多いと思います。
そして、その薬自体が転倒に影響を及ぼすことがあります。
なんとなくは知っていても、具体的にどの薬がどれくらい転倒に関わるかを知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は、9種類の薬の中からどの薬が転倒と関連するのかを調べたシステマティックレビュー(メタアナリシス)を紹介します。
これは、2009年にブリティッシュコロンビア大学が行った研究でして、包括基準を満たした22論文79081人を対象に『降圧薬』『β-遮断薬』『利尿剤』『神経遮断薬・向精神薬』『鎮静剤・睡眠薬』『麻薬性鎮痛薬』『抗うつ薬』『ベンゾジアゼピン』『NSAIDS』の9種類の薬と転倒との関連をメタ分析したものになります。
ちなみに、この22論文の中にはRCTが入っていないので、メタアナリシスの中では質の低いものになってしまっているのが残念ですが、コホート研究10本、症例対象研究5本、横断研究7本なので、まあまあ信用できるデータかとは思います。
早速結果に移っていきたいと思うんですが、結論の前に9種類それぞれと転倒との関連をOR(odds ratio)、CI(confidence intervals)を見ていきましょう。
降圧薬(antihypertensions)
- OR 1.24
- CI(1.01-1.50)
β遮断薬(β-blockers)
- OR 1.01
- CI (0.86-1.17)
利尿剤(diuretics)
- OR 1.07
- CI(1.01-1.14)
神経遮断薬、向精神薬(neuroleptics and antipsychotics)
- OR1.59
- CI(1.37-1.83)
鎮静剤、睡眠薬(Sedatives/hypnotics)
- OR1.47
- CI (1.35-1.62)
麻薬性鎮痛薬(narcotics)
- OR0.96
- CI (0.78-1.18)
抗うつ薬(antidepressants)
- OR1.68
- CI(1.47-1.91)
ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)
- OR1.57
- CI(1.43-1.72)
NSAIDS
- OR1.21
- CI(1.01-1.44)
ORはオッズ比のことでざっくり言うと、薬を飲んでない人を1とした時、飲んでいる人が何倍転倒したかを表しています。CIは信頼区間のことで、ここでは95%の人がこの範囲に収まっていますよと言うことを意味しています。つまり、降圧薬で考えると、ORは1.24、CIが1.01-1.50なので、平均すると降圧薬を飲んでいる人は飲んでいない人に比べると1.24倍転倒しておりそのばらつきは1.01-1.50だよーと言う風にとりあえず理解していただければと思います。
あくまでも、先行研究を集めて平均化したものですけどね!!
これを見るとそれぞれの薬が大体どれくらいリスクが上昇するかが見て取れますが、この論文ではさらに踏み込んで様々な交絡因子を検討した結果も導き出しています。
その結果から転倒と関連する薬が最終的に3種類まで絞り込まれました。
それが
- 『鎮静剤・睡眠薬』『抗うつ薬』『ベンゾジアゼピン』の3種類が転倒と最も関連する薬である
です。
ふらつきを招くような薬がやはり転倒を招きやすいということでしょうか。
なぜ転倒しやすいかは実際わかりませんが、精神疾患のある方や、認知症の方、慢性疼痛の方などはこのような薬を使用している可能性が考えられますので、薬の内容を理解しておくことは重要であると考えられます。
最低でもこれら3種類の薬は覚えておくと、リスクの把握につながるのでオススメです。
皆さんの参考になれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
参考文献
Woolcott , John C., et al. Meta-analysis of the impact of 9 medication classes on falls in elderly persons. Archives of internal medicine, 2009, 169.21: 1952-1960.