理学療法士のこうすけです。
突然ですが、皆さんは『親切』ですか?
答えるのに困った人がほとんではないでしょうか?
しかし、理学療法士を含めた医療従事者や飲食店などのサービス業に携わる方は親切を求められる代表的な職の一つです。
親切でなければいけない職業であるということです。
僕は、理学療法士として病院に入社してから、入院中の患者さんには理学療法の時間以外にも病室に足を運んだり、飲み物を買いに行くのに付き合ったりという『親切』を仕事の中で実践していきました。もちろん患者さんだけではなく、他のスタッフが困っている時は自分の仕事を後回しにしてでも代わりに仕事をしたり、手伝ったりしていました。
ですが、何年も働いていくと徐々に『親切にしていても正直何も良いことないよな』『収入も変わらないし』『自分の親切によって認められている感じもあまりしない』などと、親切にすることに自分の心が消耗している感覚が生まれるようになりました。
そうはいっても『親切にすると疲れてしまう、でも親切をやめると心が荒んでいく感じがしてまた疲れてしまう』と八方塞がりになり、さらに追い込まれていく感覚に陥っていました。
そんな日常をなんとか打破したいと手に取った本によって、考え方を見直すきっかけになったので、今回はその情報を交えながら親切に対する考え方についてお話してしていきたいと思います。
- 日々親切を心がけているが、心が消耗してしまっている人
- 親切にするメリットが見出せず、利己的になっている人
Contents
そもそも親切とはなんなんだ
『親切にしましょう、親切にしましょう』とは親や上司などみんな言いますが、親切とはいったいどういうことなんでしょう。
GOOGLEで”親切とは”と調べると
相手の身になって、その人のために何かをすること。思いやりをもって人のためにつくすこと。また、そのさま。 GOOGLEより引用
と出てきます。
当たり前のことが書かれていますね。
”思いやりを持って人のために尽くす”
つまり、相手のためであって自分のためにはならないのか・・・だから、自分がどんどん消耗していくのか!
なんて意地悪な考え方も浮かんできます。
定義から見ていくと、親切は自分に良いことはなさそうです・・・(泣)
なぜ人は親切にするのか?
こんな自分に良いことが無さそうな『親切』ですが、なぜ人は親切にするのでしょうか?
- 相手に好かれたいから?
- 無償の愛を提供したいから?
- 親切にすることによる見返りを期待しているから?
など、親切にする理由は様々ですが、その行き着く先はおそらく哲学に落ち着くでしょう。
人間本来の性質は慈悲と愛の心である
これはノーベル平和賞を受賞しダライ・ラマ法王の言葉ですが、人間本来の性質が慈愛と愛の心であれば、親切にすることは当たり前とも言えそうです。
親切がなぜ辛いのか?
しかし、僕が知りたいのはそんなことではありません。
親切にすると心がとても晴れやかな気持ちになったり気分が高揚したりした経験もあり、この感覚がなんなのかということを知りたいわけです。
そして、親切にしているのに、消耗していく感覚と何が違うのかを知りたいのです。
なぜ人間本来の性質の賜物でもある『親切』が辛いのでしょうか?
これは、『対価がないから』ということに尽きるでしょう。
親切にして得られるものはときおり訪れる『快楽感』だと考えています。
しかも、毎回得られるわけではなく、相手から”お礼”や”感謝”があって初めて得られるものです。
親切にして『おせっかいだな』『余計なお世話だ』と言われたり、無反応のように何もなかった場合では幸福感は得られません。
このように親切にしても毎回対価がもらえる訳ではなく、むしろ相手から小言を言われたり、親切にすることに費やした時間が無駄になったことに対して親切が辛く感じるのではないでしょうか?
親切が体に与える影響
では、親切にすることは対価をもらえて初めて意味のあるものであって、そうでなければ意味のないものなのでしょうか?
これに対して、科学はNoと自信を持って答えます。
そうです。科学は親切は対価など関係なくその行為自体に意味があると言っているのです。
ここからは、デイビッド・ハミルトン著『親切は脳に効く』を参考に、親切がどのように親切にした人自身に影響を与えるのかについて紹介していきたいと思います。
親切は幸せをもたらす
さっきまで、対価がなければ、親切など意味がないと言いましたが、科学は全く反対の結果を示しています。
カリフォルニア大学リバ ーサイド校の心理学教授 、ソニア・リュボミアスキーの研究では 、ボランティアの参加者に一週間に五つの親切を六週間続けて行ってもらい 、親切な行為を意図的には行わない人々の対照グル ープと比較したところ、親切にしたグループにおいて幸福度が高まったと報告しています。
親切にしないより、親切にした方が幸福度が上がる
これらの結果は、親切にして対価が無いことを恐れるあまり、親切にしないことはより幸福度を下げてしまう結果になるということに他なりません。
なので
『困っていそうだから手伝ってあげようかな?でも時間もかかるしおせっかいになったらどうしよう?』
などと考えるのは、ナンセンスであり、幸福度を高める可能性の高い”親切”を選ぶべきであると考えられます。
また、他の研究でもボランティアの人々にお金を渡し、半数の人には他人のために使うように、残りの半数には自分のためにお金を使うようにしてもらったところ、他人のためにお金を使った方が、幸福度が高かったという報告もあります。
時間的にも、金銭的にも親切にすることは非常に良いということがわかりますね。
そしてこれは感覚的なものではありません。
親切にすると、脳内の感情に関わる神経伝達物質『ドーパミン』や『セロトニン』や脳内麻薬としても有名な『エンドルフィン』、絆のホルモンとも言われ、出産時の女性に大量に分泌される『オキシトシン』の量が増えるという研究もあるのです。
ここまで、分かっていれば、親切にすると幸せになる理由に少し納得できますね。
心臓と血管を強くする
これは、先ほど述べた『オキシトシン』に関連することですが、オキシトシンには血圧を低下させる効果があるのです。高血圧は明確な心疾患のリスクファクターとしても知られており、血圧を低下させることができれば、心臓と血管にも良さそうだなということがわかりますね。
また、オキシトシンは酸化ストレスや炎症を抑える物質としてもよく知られており、抗炎症効果によるリスクの低下も期待できます。
また、他の研究でも他者との絆が強かった地域では心疾患の数が少なかったという報告もありバイアスはありますが、実際の効果としても期待できそうです。
老化を遅らせる
ここまでくると、オカルトじみてきますが、オキシトシンの効果は老化を遅らせる効果もあります。
オキシトシンは幹細胞が筋細胞に変化するときに必要になる物質です。筋肉とは骨格筋だけではなく心筋などの平滑筋も含まれます。
つまり、親切にするとオキシトシンが分泌され、その結果、筋肉量の維持・向上の手助けにつながるということなのです。
さらに、オキシトシンは酸化ストレスや炎症を抑える物質であるため、肌にも良いと言われています。
他にも様々な要因で、老化を遅らせるために親切が効果的であるとされており、親切の良さを再確認できる結果となっています。
今回は親切が体に及ぼす影響を3つ挙げましたが、デイビッド・ハミルトン著『親切は脳に効く』では5つまで述べてられており、非常にわかりやすく書かれているため、興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。
親切にする人が成功する
ここまで、親切が身体に及ぼす影響について述べてきましたが、どうやら親切にする効果はそれ以外にもあるようです。
『GIVE & TAKE:『与える人』ほど成功する時代』の著者でありペンシルベニア大学ウォートン校の史上最年少の終身教授であるアダム・グラントは、人を”GIVER(与える人)””MATCHER(バランスを取る人)”TAKER(もらう人)”に分類して、数多くの研究を行い、その結果社会的に最も成功した人はGIVERであったと述べています。
つまり、GIVERとは与える人であり、与える人は親切な人であるため、親切な人が社会的に成功するということも十分にありそうです。
ただし、アダム・グラントは最も成功から遠かったのもGIVERであったと述べています。
は!?
と思ったあなたは、ぜひこの『GIVE&TAKE』を手にとってみてください。笑
その秘密が書かれています。
少なく見積もって人生が変わるくらいの影響はありますよ。
結論 人には親切にしましょう
親切にしながら消耗していると感じていた僕は、二冊の本に出会い科学的な知見を取り入れることにより、自分が親切なことをする際に以前にも増して自信を持って行うことができるようになりました。
まだまだ、人に親切にするときにモヤモヤした感情が湧くときももちろんありますが、”親切にする”ということの大切さを再確認し、自分を高める手段として使っていけると、僕を含めて皆さんにもきっといい影響があるのではないかと感じました。
そして最後に皆さんに知っておいていただきたい言葉があります。
『自分にも親切でなければならない』
これはデイビッド・ハミルトンの言葉です。
人に親切にと心がけるあまり、自分が消耗してしまったときには少し休憩して自分に親切してあげてくださいという非常に優しい言葉です。
無理をせずできる限りでいいので人に親切にしていけるといいですね。
参考になれば嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました。
参考文献
デイビッド・ハミルトン著『親切は脳に効く』
アダム・グラント著『GIVE & TAKE:『与える人』ほど成功する時代』