理学療法士のこうすけです。
今回は、『大腿骨近位部骨折後の2年以内の転倒因子』について検討した論文を紹介します。
これは、2017年に慈済科技大学が行った研究で2001年〜2004年、2005年〜2009年の間に大腿骨近位部骨折で入院となった60歳以上の男女181人を対象としています。
この中から2年間のフォローアップ中に死亡したもの、研究参加を拒否したものを除いた131名を対象に、人口統計学的特徴、臨床的特徴、認知機能、栄養状態、抑うつ症状、大腿四頭筋筋力、大腿四頭筋の持久力、開眼時の静的バランス、ADLおよびIADL評価を行い、
受傷後1年および2年間における転倒リスク因子を調査しました。
結果はこちらとなります。
受傷後1年以内の転倒予測因子(多項ロジスティック回帰分析の結果より)
- 一回転倒においては健側大腿四頭筋の持久力が最も転倒と関連する
- 複数転倒においては年齢と抑うつ症状が最も転倒と関連する
受傷後2年目における転倒予測因子(多項ロジスティック回帰分析の結果より)
- 一回転倒および複数回転倒ともに退院後ADL(CBIにて計測)が転倒の最も強い予測因子であった
大腿四頭筋の持久力測定は、MAXの40%の負荷で何秒間持続的に収縮可能かどうかを測定する事で評価。
- ADL評価の一つ
- 高齢の大腿骨近位部骨折患者に対するADL評価として高い信頼性と妥当性がある
- 評価項目は食事、移乗、清拭、トイレ、入浴、歩行、階段、更衣、排尿排便コントロールからなる0~100点の評価方法
以上のような結果となりました。
この論文は単変量ロジスティック回帰分析も行なっているので、もう少し細かい結果も載っておりますが、概ね高齢者の転倒要因と被っている要素が多いなという印象でした。
この結果を見て面白いと思ったのは、健側の持久力が転倒に影響するという点です。
もちろん、健側の能力をおろそかにしていたわけではないですが、この結果を見ると健側も意識的にトレーニングしていく事で、転倒を減らせるかもしれませんね。
参考になれば嬉しいです。
参考文献
YEH, Hsiang‐Fen, et al. Predictors of postoperative falls in the first and second postoperative years among older hip fracture patients. Journal of clinical nursing, 2017, 26.21-22: 3710-3723.