理学療法士のこうすけです。
肩関節周囲炎に対しての理学療法といえば、徒手療法、運動療法、物理療法などが代表的なものとして挙げられますが、それらのエビデンスはどの程度なのでしょうか?
日本理学療法士協会が2011年に発表した理学療法診療ガイドライン第1版;肩関節周囲炎では徒手療法、運動療法、徒手療法ともに推奨グレードはB(行うように勧められる科学的根拠がある)とされていますが、参考文献のほとんどがシステマティックレビュー(非常にエビデンスレベルの高い論文)より下の論文であり、正直効果はよく分からないよなーというような結果でした。
また、2011年に発表されたガイドラインであるため、少し古く2020年にアップデート予定の肩関節周囲炎のガイドラインが楽しみではあるわけですが、チョチョイと2011年の状況とは変わってきているのを個人的にも感じています。
ちなみに2020年に発表予定のガイドラインはその他の疾患も多くあり、こちらから確認してみてください。
変わってきた点として例を挙げると物理療法があります。2011年の段階では参考文献が高くてもRCTレベルのものしか使われていないですが、2014年に肩関節周囲炎に対する物理療法の効果に関するシステマティックレビューも出ており、ほとんどの介入は効果は不明ですという結論が出ているわけです。
同じように2011年以降に運動療法と徒手療法の効果に関するシステマティックレビューが2014年に出ているため、今回は紹介したいと思います。
論文紹介
今回紹介する論文は『Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis (frozen shoulder) (Review)』といタイトルでして、2014年にコクラン共同計画が発表したシステマティックレビューです。
肩関節周囲炎に対する運動療法や徒手療法の効果を検討している論文3173論文から包括基準に含まれた32論文により検討を行いました。
研究内で行われていた代表的な運動療法は『コッドマン体操、自動および他動ROM訓練、プーリー』などで、徒手療法は『maitland’s mobilization』という手技が代表的でした。
結果
論文の中では、様々な治療の組み合わせの効果が検討されています。
例えば、『運動療法+徒手療法+物理(電気)療法+関節内糖質コルチコイド(ステロイド)注射と関節内糖質コルチコイド注射を比較した』みたいな感じです。
いろいろ検討してみた結果を大雑把にいうと
- 肩関節周囲炎に対する運動療法と徒手療法の併用の効果は不明(運動+徒手 VS プラセボの研究がない)
- 短期間で見ると関節内糖質コルチコイド注射より効果は劣る(運動+徒手+電気の場合)
- 運動療法、徒手療法単体で見てもばらつきが大きく効果は不明
となりました。
私見と考察
肩関節周囲炎に対する運動療法や徒手療法の効果はよくわからんぞという結果となったわけですが、この原因はバイアスの高い研究が多いのと、研究論文自体の少なさからきています。
理学療法というのは、検証が難しい分野とはよく言われていますが、EBMが提唱されてから何十年も経った今でも質の高い論文があまりないというのは少し寂しいですね。
理学療法の論文(主に整形外科)を見て、いつも感じることはほとんどの介入って根拠に乏しいんだなということです。
学校で授業を受け、実習で学び、臨床に出てからも学び続ける僕たちですが、果たして自分がやっていることにどれくらいの価値があるのか疑問に感じてしまうときがあります。
この結果も同様に我々理学療法士を戸惑わせるようなものとなっていますね。
ただ、絶望しても仕方がありません。
システマティックレビューレベルではまだ効果が不明でも、1ランク下がったRCTでは効果が認めらている方法はあります。
これらの論文をしっかりと読んで、実践していくことで効果が期待できるのではないでしょうか。
肩関節周囲炎に対する理学療法の効果を検討した論文を何本も見てきましたが、今んとこ大事だなと思うのは
痛みが出るような理学療法はダメ!!
ということです。
まずはベースを知って、その上でエビデンスレベルがある程度高い方法を試していくことが大切だと考えております。
参考になれば嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】