膝OAに対して結局何をやればいいのか?
理学療法士のこうすけです。
膝OAに対する運動の効果はガイドラインでも示されており、システマティックレビューでも明確な疼痛軽減効果が示されているわけですが、ガイドラインやシステマティックレビューのデータは直接臨床に置き換えにくいパターンがほとんどです。
例えば、膝OAに対して筋トレは効果的だとガイドラインで言われていても、実際には『何を、それくらいの負荷で、何回、何セット、週何回やればいいか?』は分からないわけです。
これは当然の話で、システマティックレビューとは論文を集めて解析などをして総括した論文であるため、各研究で全く同じ介入方法でない限り、そのまま応用することはできないのです。
そこで、もう少しエビデンスレベルは下がってしまうが、具体的な研究方法に落とし込む必要があります。
次にエビデンスの高い研究手法はRCTであり、RCTで効果が見られたという介入方法をそのまま実践していくということが、エビデンスをとにかく重視した介入方法であると考えられます。
そこで、今回は膝OAに対する筋トレと固有感覚トレーニングの効果を検討したRCTについて解説し、明日から実際に使える介入方法としてみなさんの臨床に利用していただければと考えています。
論文紹介 筋トレと固有受容トレーニングの効果
この論文は2009年に台湾大学病院が行なったRCTでして、
188人の6ヶ月以上続く膝痛の膝OA(KL分類グレード3以下; 関節狭小50%~75%と骨棘形成、骨硬化像)患者を対象に、筋トレ群、固有感覚トレーニング群、コントロール群(運動なし群)に分けて効果を検討しました。
介入方法
介入方法は、8週間週3回の『筋トレ』、『固有感覚トレーニング』、『運動なし』でした。
具体的な介入方法は以下の通りです。
筋トレ群
- 1RMの50%の負荷で座位でのレッグエクステンションを実施
- 6回4セット
- インターバルは1分間
- 両側の訓練の間は5分間
固有受容感覚トレーニング
- 座位で足元のペダルを操作して画面上の蛇を追いかけるコンピューターゲームを実施
- 片足20分で両足実施
- 両足の訓練の間の休憩は10分間
- 膝OA患者の固有受容感覚を改善することが示されている方法である
コントロール群
- 何もしない
OUTOCOME
OUTCOMEはWOMAC pain score、WOMAC function score、3つの異なる地形での歩行時間、膝伸展・屈曲筋力、reposition errorで介入開始時、8週間の介入後に実施しました。。
- WOMAC pain score
- WOMAC function score
- 3つの異なる地形での歩行時間(60m平地歩行、13段の階段昇降、12mのスポンジ上歩行)
- 膝伸展・屈曲筋力
- reposition error
結果
それでは結果を見てみましょう。
-
- 疼痛、機能、歩行時間は筋トレ群、固有感覚トレーニングで大きく改善した
- 膝伸展・屈曲筋力は筋トレ群、固有感覚トレーニングともに改善した(筋トレ群は膝伸展筋力を大きく改善した)
- 筋トレ群では階段昇降時間、固有感覚トレーニング群ではスポンジ上歩行時間が特に短縮した
- 固有感覚トレーニング群は固有感覚を有意に改善した。
以上のような結果となりました。
筋トレも固有感覚トレーニングもどちらも効果がありますが、コンピューターを使用しないとトレーニングが行えないことを考えると、筋トレが一番取り入れやすいかもしれませんね。
というわけで、明日から膝OA患者さんには『レッグエクステンションを1RMの50%で6回4セット、週3回、8週間実施』しましょう。
参考になれば嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました。
【参考文献】